深層的多様性をイノベーションにつなげるチームワーク教育
~ユングのタイプ論のローエンド型利用で心理的安全性を高める~
外部環境が非線形で変化している中、組織にはPDCAを着実に回すことと状況適応を的確にすることの両方が求められています。
そのオペレーションの土台となる「人への投資」も社会的に要請されています。
本研究の目的は、深層的多様性を生かした協調設計(collaborative design)が成員間の自律的判断により実現されるよう、あらかじめ成員に対しておこなう教育プログラムを、ユング心理学のタイプ論を理論的基盤として定式化することにあります。
そこで、「性格=心の習慣=認知スタイル=タイプ」と解釈したうえで、深層的多様性の根源的な属性である認知スタイルに着目し、タイプ論を座標軸にして「自己理解」「他者理解」を促進することで、「寛容性向上(心理的安全性の向上)」をはかれるようにしました。
教育プログラムは、当初、米国で試行されていた教育プログラムを参考にしていましたが、内容に問題意識を感じたために、日本人の心性に合うように設計思想から変えるとともに、企業内研修では十分に取り入れられていないと思われる学術的知見を組み入れたものにしました。
教育プログラムは、実施形態としては、授業と演習により構成され、ねらう教育効果としては、高次の思考(例 メタ認知やクリティカル・シンキング)を育成しながら、深層的多様性を生かし合う「マインドセット」と「スキルセット」を体得させるものです。
キーワード:協調設計、深層的多様性、心理的安全性、ユングのタイプ論、教育サービス
1 研究の特徴
◆深層的多様性(Deep-level diversity)
多様性は、表層的多様性(例:年齢、性別)と深層的多様性(例:価値観、認知スタイル)に分けることができます。本研究では、リフレーミング(違う枠組みで見ること)を容易にするため「認知スタイル」に着目し、それを理解するための理論としてユング心理学のタイプ論を利用します。
◆ユングのタイプ論(Jungian psychological type theory)
スイスの精神科医・心理学者であったカール・グスタフ・ユング(1875-1961)によって提唱された同理論は、6つの構成概念が2項対立の関係になって三つの両極構造(構え、知覚機能、判断機能)をつくることを仮定して,それぞれどちらの極に指向(好み)があるかで心の習慣ができると考えます(図1)。

◆心理的安全性(Psychological safety)
心理的安全性とは、対人的リスクのある行動を安全におこなえる場であるという信念がメンバーに共有された状態をいいます。
本研究では、タイプ論を座標軸にして自他の認知スタイルを解釈できるようにすることで、成員の「自己理解・他者理解・寛容性向上」を促進させます。
その結果、自他の認知スタイルを考えた相補的なふるまい(図2)と心理的安全性への配慮が、ともに増進していくことが検証されました。

2 社会実装に向けて
今後は、社会実装の取り組みとして、個別の依頼に応じて、カスタマイズした教育サービスを提供することが可能です。
本教育プログラムの利用により、キャリア形成支援、対人関係能力育成、イノベーション創発も期待できます。
マインドセットとスキルセットは、研修の目的、期間、人数(数名~数十名)に合わせて再構成できます。
職場や企業からの依頼があれば、教育サービスの内容を検討し提案いたします(表1)。

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